大学院での2年間

 西川 チームにおける2年間のタイムスケジュールを簡単に説明させていただきます。 教職大学院の授業はプロジェクト科目と言われる学校に入り込む授業が中心です。それが修士1年と2年の後期にあります。そしてもう一つの柱は臨床共通科目で、これは修士1年の前期に位置付けられています。

 

 若い学生さんは修士1年の後期から、修士2年の前期は受験に邁進してもらわねばなりません。ただし、私も教員採用試験の受験勉強をしましたが、それから言えることは、あんな勉強を24時間毎日やることは出来ないことは確かです。勉強に支障のない範囲内で、学校に入って昨年の教え子たちの顔を見ることは「やるぞ~」という気になります。でも、あくまでも無理のない範囲内です。

 

 修士2年の後期は大学院の集大成です。新しく入った下級生の修士1年生と一緒に学校に入り、修士1年とは違った視点で子どもや教師を見ることが出来ます。
 2年間を通して、実際の学校に入った長期の実践研究を行い、14条特例の大学院(即ち、2年目は職場に戻る形態の大学院)では実現できない研究を行っております。

 

 西川研究室は学会発表をして学会誌レベルの論文をまとめます。大変ですが、『学び合い』でやると、何故かそれが出来ちゃうのです。

 

 その理由は、出来るような2年間の学びのシステムがあるからです。それを説明します。

 

               修士1年4月

 4月中に面談期間があり、4月下旬にはゼミ配属が決まります。

 配属が決まったら、過去の西川ゼミの研究成果を読むことになります。具体的には過去に西川研究室が出版した本を読んで、私と議論します。西川ゼミが現在やっていることは、かなりぶっ飛んだことをやっています。しかし、それらは三十年間の学術研究・実践研究の積み上げに基づくものです。途中経過を知らずにいればぶっ飛んでいますが、途中経過を知れば論理的に正しいことが分かります。過去の本を読むことによって、それを追体験します。最初は読むべき本の指定があります。

 決まって最初にあるのが研究室の歓迎会。西川ゼミを希望される方は、ゼミ生に忘年会の日時を聞いて、バイトのシフトを避けるようにして下さい。

 

               修士1年5月~6月

 毎週学年ゼミがあり、私と議論します。これによって西川研究室の過去の積み上げを理解します。

 

                修士1年7月~8月

 研究のテーマを決めます。あくまでも仮テーマです。

 

               修士1年9月~10月

 テーマ・方法を決める期間です。後半には、試行的なデータ収集を行います。 本当に自分のやりたいことを後期に入る学校でやれるためには、人間関係が重要です。若い学生さんが後期の10月になって学校に行き、「私は○○をしたい!」といきなり希望を言って受け入れてくれる学校はありません。やりたいこと以前に、人間として疑われてしまいます。まずは人として見てもらい、「うん、この人ならば子どもを任せても安心だ」、「こんな人だったら一肌脱ごう」と思って頂けなければなりません。これは現職院生さんでも同じです。それぞれの地域では知られた人であったとしても上越の学校ではそうとも限りません。どんな先生であっても、異動してしばらくは静かにして、学校の様子などを見回し、自分のはまる場所はどこかな、とか、この先生にお願いするにはどうしたらいいか、なんて見届けることが最初ですよね。あれと同じです。

 修士1年の前期は授業がいっぱい、いっぱいで大変です。でも、少しでも時間を作ってお願いしたい学校に入って自分を受け入れてもらうことが最初だと思います。その上で、相手学校の先生方と折り合いを付けながら後期の計画をたてます。

 

              修士1年10月~12月

 本格的なデータ収集に入ります。毎週、収集したデータをもとにして研究の方向性を確認します。

 修士2年の研究を協働してまとめて臨床教科教育学会で発表します。なお、共同研究ではなく個人研究も可能です。

 

            修士1年1月~修士2年8月

 採用試験の勉強に集中します。3月までに、それまでの研究成果を学会論文形式にまとめます。データ収集が未完成なので、結果及び結論は書けません。しかし、目的、方法、そして結果の表は書けます。これが学年全員が書き終わった段階で週1回のゼミが2週間に1回の頻度となります。

  現職院生さんの場合は受験勉強をしなくても良いですよね。おそらく修士1年の実践を通して、「このことを自分の現任校で実践したい!」という気になる方もおられると思います。そういう方の場合は、前期は現任校に戻って思う存分、実践することも可能です。

 

               修士2年9月~10月

 データ収集は10月で終了します。それまで収集したデータによって学会誌形式の論文を執筆します。11月12月のデータによって最終的な結果の数値は変わりますが、目的、方法、結論はおおよそ書けます。また、結果の表の枠組は書けます。それを書き始めます。臨床教科教育学会の要項作成では、目的、方法、結論で書くことになります。

 

              修士2年11月~12月

 データ収集が終わっているので、結論が決まります。結論が決まれば、それと連動して目的が定まります。これを基に臨床教科教育学会の要項とプレゼンを作成します。

 

                 修士2年1~3月

 臨床教科教育学会で発表します。また、作成済みの学会誌論文を基に卒業研究を書きます。学会誌論文が書き終わっているので、形式を整えるに過ぎません。また、卒業研究発表会のプレゼンを作成します。

 学会論文形式を完成した段階でゼミは完了します。

 

以上が2年間の流れです。